仕事場

糸から布へ・・・

紬の反物の制作の様子をご覧いただきながら、我が家の仕事の工程を紹介します。


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1.《精練》

私共の仕事は白い糸を買うところから始まります。木綿や麻の糸は油分や汚れを取り除くため、

絹糸はセリシンというニカワ質を取り除くために石鹸を溶いた熱湯で糸を煮る“精練”という

工程が最初の作業です。. . (写真をクリックすると拡大します。)

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2.《糸の染色》

“精練”の次は“糸染め”です。糸を染める染料にはいろいろ種類がありますが、木綿や麻は藍と顔料で染めることが多いです。

絹糸は植物染料を下染めした上に色の堅牢度を高めるために化学染料で上掛けと色合わせを行います。

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3.《色合わせ》


絹糸の場合は色見本を用意し、染めた糸と見本糸とを見比べながら可能な限り色を合わせます。



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4.《糊付け》

木綿や麻は細糸の場合、そして絹は全ての染め上がった糸に“糊付け”を行います。糸に張りを持たせて

扱いやすくするためと、糸の繊維の毛羽立ちを押さえて作業をしやすくするためです。


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5.《カセを広げる》

糊を溶いた水の中でしっかり揉み込まれた糸は絞って水分を切り、カセの糸が一本一本ばらけるように

広げます。この工程を怠ると次の糸巻きの時に糸の解れが悪くなり無駄に時間を費やす事になります。


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6.《糸の乾燥》

糸の乾燥には天日が一番。晴天でわずかに風のある日が絶好です。雨の日でも糸を染めなくてはならない事が

ありますが、こんな日はストーブで糸を乾かします。しかし天日で乾かした糸の方がストーブで乾かした糸よりも湿度の高い日が来てもパリッと乾いた状態を保っています。

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7.《大管巻き》

糊の乾いた糸は次の“整経(経糸の長さと本数を揃える作業)”のために糸車を使って大管に巻き取ります。




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8.《整経》

紬の反物の場合、経糸は50本ほどの大管に巻き取ります。これを管立てに並べて整経台と呼ぶ木の枠に

打たれた釘に糸を掛けながら必要な長さと本数を準備します。


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9.《アゼ取り》

糸が整経台を一周する度に綾(アゼとも言います)を取ります。糸を二本づつ交差させて綾を取り、

糸の並びが乱れないようにする織物の作業の中でも一番大切な部分です。


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10.《巻き筬通し》

整経が終わった経糸は、綾をアゼ竹に取って筬(オサ)と呼ばれる細かな櫛のような道具に通します。

経糸を機に取り付けるための千切り(男巻き)に糸を均等に巻きつけるために経糸の密度と巻き幅を

決める作業で“巻き筬通し”または“荒筬通し”と呼ばれます。

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11.《千切り巻き》

我が家では長さが約9mほどある廊下に経糸を張り、ここで“千切り巻き”の作業を行います。糸に吊りや

弛みが出来ないよう均等に巻いていきます。


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12.《節取り》

紬を織るための経糸には糸に節(太さの不規則な部分)のある玉糸や紬糸を用います。そのため織るときに

邪魔になりそうな毛羽や極端に太い部分を取り除きながら千切り巻きの作業をしなければなりません。


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13.《綜絖通し》


千切り巻きの後は綜絖通しです。経糸が一本おきに上下するための仕掛けに糸を通します。



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14.《織り筬通し》


“織り筬通し”は布を織る直前の作業で、この段階で最終的な経糸の密度と幅が決まります。



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15.《機織り》


ここまで来るとどなたもご存知の“機織り”が始まります。



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16.《湯通し》

織り上がった布は糸の段階で付けられた糊を落として素材本来の風合いを出すために“湯通し”という

作業を行います。ぬるま湯や水に漬けては揉んで糊の成分を洗い落とします。


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17.《伸子張り》


糊が落とされた反物は軽く水を切って庭に張り、約一寸(3.8cm)間隔で伸子を打って乾燥します。



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18.《砧打ち》

乾いた反物は板巻きにした後、平らな石の上に置いて上から砧(きぬた)で打ちます。打つと言っても

打ち付けるのではなくてソクソクとリズム良く満遍なく布の上を打ち、乾いてまだ強張っている糸を

ほぐして経糸と緯糸の馴染みを良くし、素材本来の風合いを出すためです。


この“湯通し”から“砧打ち”の仕上げまでをしておくと、お客様の手元に渡った時にすぐに仕立てが出来るのです。